アルギニンは、自然に存在するアミノ酸の一つです。主に魚、家禽、赤身の肉、乳製品などに含まれており、人体がタンパク質を生成する際に利用されます。
多機能なアミノ酸であるアルギニンは、体内での一酸化窒素の生成に関与し、男性機能や健康的なサポートもしてくれるスーパーアミノ酸であり、サプリメントとしても市販されています。
では、アルギニンの成分がどのような効果が期待できるのか論文データをもとにしてお話ししてきます。
※臨床試験(エビデンス)の成分データは、医薬品とは違い効果を保証するものとしてではなく、成分の基本的な知識として参考にしてください。
アルギニンの勃起機能に関する効果
アルギニンは、体内で一酸化窒素の生成に必要なアミノ酸です。一酸化窒素は、勃起を促すペニス内の平滑筋組織のリラックスに重要な役割を果たします。
また、シトルリンはアルギニンと類似した効果を持ち、体内でアルギニンに変換されることが知られています。この変換過程で一酸化窒素(NO)が生成され、血管を拡張し血流を促進する効果が確認されています。
アルギニンは、このプロセスにおける重要な構成要素と考えられており、勃起機能の強化に役立つとの主張されており、陰茎に血液が充満することで陰茎は勃起をするので血流がとても重要になります。
アルギニン勃起機能に関する研究
アルギニンのED治療に対する効果に関する研究は、その結果が混在しており、昔の研究(1999年)では、アルギニンサプリメントとプラセボのどちらも少数の男性において性機能の改善をもたらしましたが、両者間での有意な差は見られませんでした。
一方で、2003年の「Sex & Marital Therapy」誌に掲載された研究では、アルギニンアスパラートとピクノジェノール®を組み合わせたサプリメントが25歳から45歳のED患者40人の勃起機能を改善したことが報告されています。治療3ヶ月後には、より男性が通常の勃起改善ができたと報告されました。
さらに、最近の「Psychosexual Health」誌のレビューでは、アルギニンに関する複数の研究を検討し、アルギニン摂取と勃起機能についての前向きな証拠があると結論付けています。
ED治療においては、バイアグラ®の有効成分であるシルデナフィルやシアリス®の有効成分であるタダラフィルなどの医薬品ではなく、アルギニンは天然成分であり、食品として位置付けられています。
参考文献
Pranau K. Panchatsharam; Justin Durland; Patrick M. Zito. Physiology, Erection
Klotz T, Mathers MJ, Braun M, Bloch W, Engelmann U. Effectiveness of oral L-arginine in first-line treatment of erectile dysfunction in a controlled crossover study. Urol Int. 1999;63(4):220-3.
Stanislavov R, Nikolova V. Treatment of erectile dysfunction with pycnogenol and L-arginine. J Sex Marital Ther. 2003 May-Jun;29(3):207-13. doi: 10.1080/00926230390155104.
Koolwal A, Manohar J. S, Rao TSS, Koolwal GD. l-arginine and Erectile Dysfunction. Journal of Psychosexual Health. 2019;1(1):37-43.
アルギニンの健康に関する効果
高血圧の改善サポート
アルギニンは血管の内皮細胞において重要な役割を担います。一酸化窒素合成酵素(NOS)により一酸化窒素(NO)に変換されることで、血管を拡張し血圧上昇を防ぐ作用があります。
内皮細胞の障害によりNOの産生が低下すると、血管の拡張が困難になり、血圧の悪化や動脈硬化のリスクが増加します。したがって、アルギニンの摂取は高血圧の改善に効果的です。
7つの臨床試験で、アルギニン摂取による血圧の変化が分析され、高血圧の方が、アルギニンを継続的に摂取することで血圧調整に有意に関係性があることがわかりました。
参考文献
McRae MP. Therapeutic Benefits of l-Arginine: An Umbrella Review of Meta-analyses. J Chiropr Med. 2016 Sep;15(3):184-9.
運動パフォーマンスの向上
アルギニンは運動による疲労の軽減にも寄与します。特に乳酸の蓄積を減少させることで、運動能力が向上します。
運動能力の向上は、心臓病、高血圧、糖尿病、肥満、骨粗鬆症、結腸がんなどのリスク低減につながります。1日アルギニン2gを45日間摂取した男性アスリートを対象にした研究では、最大酸素摂取量の有意な増加が確認されました。
参考文献
Pahlavani N, Entezari MH, Nasiri M, Miri A, Rezaie M, Bagheri-Bidakhavidi M, Sadeghi O. The effect of l-arginine supplementation on body composition and performance in male athletes: a double-blinded randomized clinical trial. Eur J Clin Nutr. 2017 Apr;71(4):544-548.
成長ホルモンの分泌促進
アルギニンは成長ホルモンの分泌を促進します。これは病気にかかりにくい体を作る効果や傷の治りをスムーズにする可能性があります。
また、食欲抑制作用があり、脂肪代謝を促進することで筋肉を強化し、体形を整える効果も期待できます。アルギニン摂取後の運動で成長ホルモンの分泌が促進されることも確認されています。
アルギニンは、勃起機能だけでなく、血圧の改善、運動パフォーマンスの向上、成長ホルモンの分泌促進という複数の健康効果をもたらすことが期待されています。これらの効果を考慮して、アルギニンを含む食品を摂取することは、日常の健康管理において非常に有益であると言えるでしょう。
参考文献
Kanaley JA. Growth hormone, arginine and exercise. Curr Opin Clin Nutr Metab Care. 2008 Jan;11(1):50-4.
アルギニンの効果的な摂取法
アルギニンとシトルリンの同時摂取
アルギニンは単体で摂取するよりもシトルリンと相性がいいです。また、シトルリンはNO3経路であるビートルート(ビーツ)と相性がいいです。また継続して摂取することが大切です。
日本の研究で、経口L-シトルリンとL-アルギニンの組み合わせが急性期においてNO依存反応を効果的かつ迅速に増強することを初めて示しました。
ラット、ウサギにL-シトルリン、L-アルギニン、または両者の半量の組み合わせを経口投与しました。投与後、血漿中のL-アルギニン、NOx、cGMPのレベルと血流の変化を順番に測定しました。
L-シトルリンとL-アルギニンの組み合わせによるサプリメントは、単独のアミノ酸と比べて、血漿中のL-アルギニンレベルの急速な上昇とNO生物学的可用性の顕著な増強をもたらしました。これには血漿中のcGMP濃度の上昇が含まれます。
ウサギの中央耳動脈の血流も、L-シトルリンとL-アルギニンの投与によって対照群と比較して著しく増加しました。
また、シトルリンはNO増加にとってNO3であるビートルート(ビーツ)と相性がいいことが研究でわかりました。
どの研究データもアルギニンを摂取して即効性が期待できるものではなく継続的に摂取を続けることで一定の成果が表れています。また、食品から摂取することができればベストですが、適量を最適な組み合わせで摂取し続けるためには、食事から難しい場合もあるのでサプリメントを活用するのも一つです。
参考文献
Masahiko Morita, Toshio Hayashi, Masayuki Ochiai, Morihiko Maeda, Tomoe Yamaguchi, Koichiro Ina, Masafumi Kuzuya, Oral supplementation with a combination of l-citrulline and l-arginine rapidly increases plasma l-arginine concentration and enhances NO bioavailability, Biochemical and Biophysical Research Communications,
Volume 454, Issue 1, 2014
Burgos J, Viribay A, Fernández-Lázaro D, Calleja-González J, González-Santos J, Mielgo-Ayuso J. Combined Effects of Citrulline Plus Nitrate-Rich Beetroot Extract Co-Supplementation on Maximal and Endurance-Strength and Aerobic Power in Trained Male Triathletes: A Randomized Double-Blind, Placebo-Controlled Trial. Nutrients. 2021;14(1):40. Published 2021 Dec 23.
アルギニンを摂取するタイミング
「アルギニン」は、摂取から約30分で血中濃度がピークに達し、2時間後にはその半分になり、4時間で元の状態に戻ることが示されています。
そして、アルギニンが摂取されてから、NOが生成されるまでの時間差があり、血流が最大となるのは摂取後約90分後が目安になります。
なので、本番や運動の90分前にアルギニンを摂取することがベストタイミングの一つになります。
A clinical evaluation to determine the safety, pharmacokinetics, and pharmacodynamics of an inositol-stabilized arginine silicate dietary supplement in healthy adult males. Clin Pharmacol. 2015 Oct 7;7:103-9.
L-arginine induces nitric oxide-dependent vasodilation in patients with critical limb ischemia. A randomized, controlled study. Circulation. 1996 Jan 1;93(1):85-90.
アルギニンの副作用や安全性
アルギニンは一般的に安全であり、適切な量で摂取された場合、重大な副作用のリスクは低いとされています。しかし、特定の病状や既存の健康問題を持つ人々には適していない場合もありますので、サプリメントとして摂取する場合には医師や薬剤師に相談することが望ましいです。
まとめ
アルギニンは、アスリートにとっても注目されている成分であり、様々な健康的なポジティブサポートする役割を持っています。また、特に男性にとって勃起機能にポジティブな影響を与えるなどのデータがあるように、メンズパフォーマンスを支えてくれるスーパーアミノ酸になりますね。
アルギニンは自然界の多くの食品に含まれており、鶏肉、豚肉、大豆や大豆製品、かつお節、ナッツ類にはアルギニンが豊富であり、継続的に摂取し続けることが成果を実感するために必要なのですが、食事として継続的に摂取することが難しいと感じる人も少なくありません。
成果を実感するためには継続的に摂取し続けることが必要なので、サプリメントを利用したり継続しやすい方法を選択することが重要になりますね。
また、アルギニンを単体で摂取するよりも「シトルリン」や「ビートルート(ビーツ)」など論文で相性が良いことが報告された成分を掛け合わせて摂取した方が、目的を果たすために適切なアプローチができるので「適切な成分量」と「最適な組み合わせ」を考えた摂取は大切ですね。