香水といえばスプレータイプの液体香水をイメージする方が多いかもしれませんが、近年注目を集めているのが練り香水(ソリッドパフューム)です。
クリームやバームのような固形状に仕上げられた香水で、さりげなく香りをまとえるアイテムとして人気が高まっています。
この記事では、練り香水の歴史と特徴、液体香水との違い、持続時間、付け方、そしてメリット・注意点までを科学的知見を交えて詳しく解説します。
練り香水とは?歴史と由来

練り香水は、蜜蝋や植物油などをベースにした固形タイプの香水です。起源は古代エジプトやインドにさかのぼり、当時は香料をオイルや動物性脂肪に溶かし込んだ「香油」として使用されていました。
宗教儀式や美容、医療にも使われ、身を清めたり心を整えるために重要な役割を果たしていたのです。
現代の練り香水は、この伝統を受け継ぎつつ、より便利で携帯しやすい形に進化しました。香りを強く拡散する液体香水とは異なり、肌に寄り添うように柔らかく香るのが特徴です。
香水と練り香水の違い

練り香水と液体香水の最大の違いは基材にあります。
液体香水:アルコールを主成分とし、香料を揮発させて香りを広げる
練り香水:蜜蝋やシアバター、ホホバオイルなど油脂を主成分とし、肌にゆっくりなじむ
この違いにより、液体香水は「拡散力が強く広がる香り」、練り香水は「控えめで近距離で香る香り」という印象を与えます。特に日本のように「無香志向」が強い文化では、練り香水の控えめさが支持されやすい傾向にあります。
練り香水の持続時間

香水は「賦香率(香料の濃度)」で持続時間が決まります。種類ごとに濃度と持続力が異なり、以下のように分類されます。
パルファン(Parfum)
賦香率:15〜30%
持続時間:約5〜7時間
オードパルファン(Eau de Parfum, EDP)
賦香率:10〜15%
持続時間:約4〜6時間
オードトワレ(Eau de Toilette, EDT)
賦香率:5〜10%
持続時間:約3〜5時間
オーデコロン(Eau de Cologne, EDC)
賦香率:2〜5%
持続時間:約1〜3時間
種類によって「香りの強さ」と「持続時間」に大きな幅があるため、目的やシーンに合わせて選ぶことが大切です。
練り香水の賦香率は5〜10%程度とされています。持続時間は 平均2〜4時間。液体香水より短めですが、香りが安定して柔らかく続きます。「すぐ消えた」と思っても、肌に近づけばほのかに残っていることが多いのが特徴です。
練り香水の付け方

練り香水はリップバームのように少量を指に取り、体温で軽く温めてから肌に塗布します。液体香水と違い「面」ではなく「点」で香らせるのが特徴です。
おすすめの付ける部位
- 手首の内側:脈が打つ部分で体温が高く、香りが広がりやすい
- 耳の後ろ・首筋:近距離で香るため、親密さを演出できる
- うなじ・鎖骨:自然な残り香を作れるポイント
- 毛先:オイルベースなので髪に軽くなじませてもOK(ただしベタつき注意)
練り香水のメリット

・アルコールフリーで肌に優しい
敏感肌の人でも使いやすい処方が多い。
・控えめでTPOを選ばない
公共交通機関やオフィスなど「香害」が懸念される場所でも安心。
・持ち運びが便利
コンパクトで割れる心配がなく、飛行機の液体制限も問題なし。
・重ね付けがしやすい
他の香水やボディクリームと組み合わせて、自分だけの香りを作れる。
練り香水の注意点
・香りの拡散力が弱い
広い空間で香りを主張したい場合には不向き。
・高温環境で柔らかく溶ける可能性
夏場の持ち運びでは保存方法に注意が必要。
・持続時間が短め
液体香水に比べてこまめな塗り直しが必要。
まとめ
練り香水(ソリッドパフューム)は、「さりげなく香らせたい」「肌に優しい香水が欲しい」という人に最適なアイテムです。液体香水に比べて控えめですが、肌に寄り添うように香りを楽しめるのが魅力。
持続時間は2〜4時間と短めですが、その分「塗り直す楽しみ」や「香りを重ねてアレンジする自由さ」があり、香水初心者から上級者まで幅広く愛用されています。
香水が強すぎると感じる方、ビジネスシーンや公共空間、デートで安心して香りを楽しみたい方には、練り香水はまさに現代的な選択肢といえるでしょう。
参考文献
Buckle, J. (2015). Clinical aromatherapy: Essential oils in healthcare (3rd ed.). Elsevier Health Sciences.
Ohloff, G., Pickenhagen, W., & Kraft, P. (2011). Scent and chemistry: The molecular world of odors. Wiley-VCH.
Sell, C. (2019). The chemistry of fragrances: From perfumer to consumer. Royal Society of Chemistry.
こすらず、やさしくなじませる
少量を複数箇所につけることで自然に香りが広がる
2〜4時間おきに塗り直すと心地よい香りが続く